1960年代に製造されていたトンボ楽器製作所のピアノホーン PH-27、楽器店の閉店で見つかった未使用のデッドストック商品を入手しました。
前回の記事ではこの楽器の歴史を現物を観察しながら推測していきました。
未使用品といえど、長年倉庫に眠っていたため若干カビ臭があり、中も確認・清掃を行わないと口をつける自信はないので早速解体してメンテナンスしていきます。
ピアノホーン(PH-27)の解体メンテナンス
まずは外カバーですが、2種類のネジで留めてありドライバーサイズも異なるものでした。
鍵盤ハーモニカによく使用されているプラスドライバーNo.1サイズのネジが4箇所、それよりも細いNo.0サイズのネジが2箇所です。
カバーを外すと鍵盤がバネで装着されている部分が出てきます。
鍵盤バネはサビているように変色している物も多数ありますが、動きはさほど気にならないので一旦汚れだけ拭き取って終わります。
たまに押すと戻ってこなくなる部分もあるので、他社製品で代用できれば換えてしまうかもしれません。
鍵盤の形は現在でもよく見る鍵盤ハーモニカの形状とよく似ています。
同じピアノホーンでも、鍵盤ハーモニカ研究者のピアノニマスさんが所有しているピアノホーンの鍵盤はL字型の形状です。
空気室を留めているネジは長四角ナットと一緒に留まっています。
そしてこのネジの大きさはプラスドライバーNo.2サイズ、四隅のネジはNo.0サイズです。
1体で3種類のサイズのドライバーを使わなければならないので、なかなか厄介です。
写真ではわかりやすいようにネジに直接ドライバーを差し込んでいますが、ネジ舐め防止にはニトリルグローブを間に挟むのをおすすめします。
ネジ山をよく潰してしまう方は、ドライバーサイズと力の入れる方向に注意してみてください。
まずドライバーサイズはネジ穴より小さいものを使わない。
ネジ穴と刃先にあそびがあると潰れる原因になります。
そして力のかけ方ですが、必ず下(ネジが埋まっている方向)へ向けて力を入れてください。
どうしても回す方向へ力を入れてしまったり、上に引き上げたいが為に下へかかる力を抜いてしまったりしがちですが、ネジとドライバーの刃先をしっかり固定して回すためには下へ向けて力を入れながら回すことが大事です。
この2つを意識するだけでネジ舐め防止対策になります。
空気室は長年開けられていなかったせいか、若干接着していましたが、マイナスドライバーで均等に隙間を入れながら引き上げるとすぐに剥がす事ができました。
開けると1枚板のリードプレートが設置されています。
プレートのネジ留めは意外にもにも4点と少なめです。
ピアノニマスさん所有のピアノホーンはこの時点で例の「水分によって伸びたり縮んだりする破れやすい、しかし紛失するといけない変な紙」いわゆるシートパッキンが張り付いていたようですが、このピアノホーンは別珍素材のような黒い布が貼り付けられています。
この黒い布がなかなか厄介な付き方をしていて、ネジ穴部分を柱にして橋のように布を渡してあります。
空気室カバーを食器用洗剤と流水で洗いたい私にとって、これは難所。
もちろん今回は洗剤や流水が使えないので、キッチン用アルコールを染み込ませた布巾で拭きました。
しかしこれは、使っていくうちに千切る自信があります。
機密性を保つために付けられているものであれば、縁とネジ穴の部分が重要な箇所だとは思うので、切れるくらいであれば問題はないのかもしれませんが、生産終了品のため損失すると厄介ですね。
リードプレートを外すとシートパッキンが出て来ます。
この設置は現行の鍵盤ハーモニカと似ていますね。
上の写真だと、鍵盤裏の様子もよくわかるのですが、鍵盤バルブの形が鈴木楽器の鍵盤笛アンデス25Fに似ています。
バルブは鍵盤パーツと一体型のものが多いのですが、ピアノホーンもアンデスも鍵盤とバルブが金具で留められています。
しかしデッドストックで眠っていただけあって、内側は思っていたよりも綺麗です。
ビンテージ鍵盤ハーモニカあるあるの虫とか出て来たらどうしようと半ばドキドキしながら解体していましたが、これなら目立った汚れを拭き取ってキッチン用アルコールで除菌して完了です。
カビ臭さも3日くらい開放しておいたら気にならなくなりました。
リードプレートと本体のネジ穴の数が違う謎
解体して気になったのは、シートパッキンとリードプレートのネジ穴の数が違う点です。
シートパッキンと本体のサイドはネジ穴が3つ用意されていますが、リードプレートのサイドにはネジ穴が1つです。
元々は違うリードプレートを装着する予定だったのでしょうか。
トンボ楽器 ピアノホーンを実際に演奏してみた
メンテナンス後に、トンボ楽器ということで、日本の名曲「赤とんぼ」を弾いてみました。
クッキーハウス制作「奇跡の器楽アンサンブルになるシリーズ」に収録されている「赤とんぼ」をソロ片手弾き用にアレンジして弾いています。
極上のピアノ伴奏はクッキーハウス 杉本徹さんです。
音の特徴などについては、前回の記事に詳しく書いているので、よかったらそちらもご覧ください。